沼島は小さい
ほとんど岩礁の大いなるものという程度の小さ
な島の住人ながら、船や船具、操船航海に独
自の開発をするところが多く、しかも豊臣期から
はるか対馬沖にまで行って操業するという気概
をもっていた。島の近くには鳴門の瀬戸があり、
あるいは由良の瀬戸があって、潮と風と波という地
球の機嫌のなかでもっともやっかいなものについては、
卓越した知識をもっていた。世界中で小島の住
人は多いが、沼島衆ほどに気概と高い能力をも
っていた海の民は、まれなのではないか。
司馬遼太郎
このページは2020年6月28日に作成しました。